436 条件付けコンプレックス その12 働く事とスローガン
- 2024/11/22
- 23:14
明日、11月23日は勤労感謝の日[ウィキペディア]です。
いつも御世話になっております。御疲れ様です。
ε=ε=ε=\(;´□`)/ ε=ε=ε=\(;´□`)/ ε=ε=ε=\(;´□`)/
[419の記事]で、「デフレマインド」について、私の意見を述べました。
〇419「経済成長が出遅れ置いてけぼり、デフレマインドからの~」のお話しの続きです。
日本の経済力の成長が止まっている原因の考察については諸説あります。
度々になりますが、復習から入りたいです。
とある経済評論家の先生は、1985年のプラザ合意[ウィキペディア]による突然の円高によって、経済・経営の規律やバランス感覚を失って、以後の迷走が発生したと言います。
円高になったことにより、「ものづくり日本」の自慢のMade in Japan工業製品の輸出が大変な苦境に陥った一方で、欧米の一流品を輸入するのは買い易くなったし、世界各地の土地を安く買えて、支社作って工場建てたらますます儲かるという「♪24時間戦えますか?」のジャパニーズ・ビジネスマンの時代になりました。
(この説の証拠になるものを探していて見つけたのですが、ジャパニーズ・ビジネスマンが出張して活躍した、その東アジア・西太平洋地域の経済発展史を語る用語で、中所得国の罠[ウィキペディア]というのがあるそうです。これは、日本の工業・産業をコピー貼り付けして展開したことで、急激に、各国が中所得と呼ばれる程度まで経済発展した様子を示しているんじゃないですかね?)
別のある先生は、1991年頃のバブル景気[ウィキペディア]の崩壊(または、バブル崩壊[ウィキペディア])によって、経済・経営の規律やバランス感覚を失ったと言います。銀行から借金するときに土地を担保にしていたが、土地価格の暴騰を政府に止められたため、その借金が焦げ付いた訳です。
以下は私の意見です。
プラザ合意の円高問題やバブル崩壊の不良債権問題は、「失われた30年」の経済停滞のうちの始めの10~15年分の原因であって、直近数年間の伸び悩みの原因は、コストダウンを目標として、東アジア・西太平洋地域から安い物を仕入れることが習慣化したことによる「デフレマインド」が癖になってしまっているのではないか?と思います。山本七平風の”空気学”と、中根千枝・小室直樹風の”ジャパニーズ構造主義哲学”で考えました。
〇労働者の賃金を抑制することと、日本の内需市場の枯死について
さて。「デフレマインド」の病と同時に、労働者の賃金を抑制することも行われてきました。コストダウンの為に。
先日の衆議院選挙のあと、労働者の手取りを増やそうという機運が高まっています。
しかし一昔前、特に2000~2015年頃は、確かに、労働者の賃金を増やすべし・待遇を改善すべしと言う主張は、「左翼的な、社会主義的な、共産党っぽい、運動家っぽい~」と、忌避される空気があったと思います。その逆側には、「グローバルな自由競争の時代に突入したので、韓国が国の総力を挙げてサムソンやLGを育てたように、台湾が国の総力を挙げて鴻海やTSMC等を育てたように、我が国も自動車産業を全力でバックアップすべき!それが資本主義だろ!」という、労働者に負担を強いてでも企業を強化して競争しようと主張する空気があったと思います。
労働者の賃金を抑制することは資本主義的であり、労働者の賃金を増やすことは社会主義的であると、世間の経済学ではなんとなくそう思われているらしいのです。しかし、経営学の視点で考えますと、労働者の賃金を増やすことも資本主義的な態度だと思えます。
それは、何故ならば、合衆国は3億の人々がクレジットカード決済で欲しい物を購入している、個人消費が旺盛な国ですよね。中華人民共和国も、13億14億の人々が、愛面子なもんで、世間体を気にしてちょっと見栄を張って豪華な品物を買い集める、個人消費が旺盛な国ですよね。そして、合衆国の市場も、中国の市場も、大変魅力的であるとして、世界中から多くの企業がそこへ進出してビジネスをしています。
労働者に賃金を多く渡して個人消費が旺盛な経済圏を作り、そこで大いにビジネスをすると言うのは、経営学の発想で考えるならば、全く資本主義的で全く正しい作戦に思えます。
日本社会が、自らの労働者・中産階級を可愛がって養うことを忘れてしまった理由も推理してみますが、まあ、あれですよ、日本は1980年代には各家庭の一戸建て住宅も自家用車もクーラーも調理家電もラジカセも洗浄便座も一通り揃っていたので、一種の満腹状態で、日本の個人消費・内需はこれ以上は伸びしろが少ないと思ったのかもしれません。その頃、東アジア・西太平洋地域の発展途上の国々には、まだ今から開拓すべき手つかずの青空が広がっていたから、そっちの方が市場として面白いと考えて、そっちに進出しちゃったのでしょうか。
ここで、世論の空気に問題があったのは、変に経営学的に考えてしまっていたことです。
経営者もビジネスマンも(または政治家も[→364の記事])、稼いで「成長」するという事を目指して仕事を頑張っていますが、企業活動や経済活動の話題における、その「成長」と言う言葉が、ただただ、無意識に、つい、「昨年の損益計算書よりも今年のが良くなっている事」を意味していたのです。
外国で安く製造して日本で高く売れば大きく儲かるとばかり考えていて、日本国内の産業を空洞化させてしまった。日本の工業や産業を100年200年も持続的に「成長」させる為には、空洞化させちゃったら大失敗じゃないですか。世間は経営学を誤って認識していて、これは間違えています。
428の記事で、国際金融のトリレンマ[ウィキペディア]という言葉を紹介しました。自由主義の経済では、産業の空洞化も、起きるべくして起きた変化であることは分かりますとも。しかし。
もしもの話。
トランプ大統領がメキシコからの移住者を拒絶したら、日本国は合衆国の友好国だからとそのメキシコ人求職者達を日本に受け入れるんですかね?安い賃金で働いてくれそうだから。
日本の経済力の成長が止まっている原因を、短めの言葉で言いますならば、「国内外のバランスが悪かった。」で合っていると思います。
・・・。
「バランスを取れ」というのは、非常に難しい言葉です。1つの事をやろう、全力を注ごう、絶対に諦めずにやりぬこうと決心している人に対して、「いや、あなた、もっと他の事もバランスを取りなさい!」とアドバイスするのは、非常に難しいのです。
鋼鉄の頑固さで、会社の仕事のことしか考えない社畜ソルジャーが、日本社会に色んな弊害を作ってきました。
今年、2024年に日本で生まれた子供の数は70万人に届かない見込みだそうです。在日外国人のお子さんを含めても70万人に届かない見込みだそうです。
もう止まるんだ!家族が居るホームに帰るんだ!
このまま進むと、外国人労働者の誰かにすっかり入れ替わった日本企業だけが残って、在来種の日本人は絶滅してしまうぞ?
もっと、バランスを取るんだよ!
〇働く人々を空気的に圧迫してきた条件付けについて
労働者を力一杯に働かせるべく、色々なスローガンが掲げられてきました。従って、我々は自分達がどういう”条件付け”に基づいて思考しているかをメタ認知しなければ、「バランスを取る」ところまで考えられません。条件付けの魔術の誘導に引っかかったままではいけません。
日本人の伝統的な社会マナーは、孔子の『論語』の影響があるとされます。その「衛霊公 第十五」の
『子曰 事君敬 其事而後其食』
子曰く、君に事えては、其の事を敬して其の食を後にす。
→ 先生はおっしゃった、主君に仕えては、仕事を敬って取り組み、給与の心配は後にせよ。
というような道徳教育を受けて育ってきたんだなということ自体を、知っておく必要があるのです。
例えば。「アットホームな雰囲気の会社です」「会社は家族だ」というのは、会社が社員一同にとって、仕事で稼いだ利益を保管したり分配したりするコンソーシアム[ウィキペディア]である、会社とは社員みんな[経営者+従業員+株主+その他]で共有している金庫であることを、言い換えた言葉です。
「会社は家族だから、社員各人が会社の為に献身してお金を稼げば、みんなに良いことがあるよ」というスローガンであるわけです。
会社が、このスローガンを唱えつつも、「人件費削減」や「40歳以上は早期退職勧奨」を実施するのならば、それは約束を破っている事になります。
働く人々に献身や負担や犠牲を期待するならば、その辛抱や努力の先にある報酬や謝礼をしっかり渡さねばおかしい。
他には、そうですね、「グローバル競争の時代だから、変革は痛みを伴う」というスローガンを使って、外国人技能実習生を保護しつつ日本人社員に負担や犠牲を受容させたとして、その負担の弁償はちゃんと果されたのでしょうか。
実体としては酷くねじれて歪んでいるのに、”条件付け”に基づいて思考しているせいで、よくわからないまま問題点を赦してしまっていて、ただ無自覚に頑張っているというようなのを、全部剥がしませんと、ブラック企業社畜ソルジャーが治らないでしょう。
〇黙契が破綻して、残ったスローガンの残響がむしろ邪魔ではないか
話が何度もくどいですが(老害)、平成生まれの若い方がお読みになる場合の為に、おさらいから書きます。用語を少し足しながら。
この20年ぐらいの間、多くの国が中所得と呼べるレベルまで経済発展をしてきて、グローバル競争が激しい時代になったので、日本企業としては、何の商品を販売すればちゃんと利益がある価格で売れるのか?の商売のチャンスの変化が激しい時代でした。遅れて経済発展してきたアジア各国のそれぞれの地元メーカーが実力をつけてきて、(日本で言えば昭和後半か平成一桁時代で特許権や意匠権の期限が切れたような、ちょっと昔の技術レベルのものではあるが、それゆえに、使い切れないほど高性能・多機能ではない、シンプルで分かり易くてベーシックで使い心地が良い)家電製品や日用品を格安で製造して日本に輸出してくるようになりました。このような競争状態は、コモディティ化[一般化、汎用品化/ウィキペディア]と呼ばれる現象です。日本企業としては、後輩に追い付かれてしまい、その時まで数十年間続けてきた商売を続けていても、ちゃんと利益が得られるような価格では売れてくれなくなりました。(日本企業は、後輩と差をつけるべく「高付加価値化」を目指して、超高性能・超多機能な製品を作ってみましたが、それは数量的にはたくさん売れないので、損益分岐を考えると苦しい取り組みに陥ってしまいました。出井伸之社長の時代のソニーのクオリアとか、覚えていらっしゃるかしら?)
労働者を終身雇用[ウィキペディア]することは、明治時代後半から大正時代に、官営工場において有能な職員を固定的に確保する目的で始まったと言われます。そんな百年も前の始まりはさておき近年までの実際としては、公務員のうちの幾つかの職が終身雇用でしたので、民間企業がそれに負けじと雇用条件を競争してきたために日本社会に広く定着したと言われます。
終身雇用が広く定着していましたが、グローバル競争のなかで商売のチャンスの変化が激しい時代になりました。企業が、工場を建てて、ひとつの製品を30年間も40年間も作り続けて居られて、従業員を終身雇用しているのが、どうにも無理っぽくなりました。
チャンスの変化が激しいから、スピーディに、必要なものを利用して、要らないものを切り捨てるしかない。従業員すらも。労働者を雇いたい状況では安い就職希望者を手軽に雇って、もう要らない状況になったら労働者を手軽に追い払いたい、コストパフォーマンスとタイムパフォーマンスを大事にしよう、となったわけです。(参考:労働者派遣法[ウィキペディア]は1985年交付。2012年と2015年に大きな改正がありました。)
かくして、黙契は破綻しました。
昭和じじい世代には、「会社は家族だから、社員各人が会社の為に献身してお金を稼げば、みんなに良いことがあるよ」という黙契があって、ある企業の正社員になって、企業の信用にも援けられて銀行から住宅ローンを借りて、一戸建ての家を建てて~~のようなモデルが存在したのですが、それは失われました。
昭和おじさん世代は、「嫌なら辞めろ!君の代わりは幾らでも居るからな!」でしたよ。何も悪い事をしてないのに。「いずれはリストラで君を解雇するつもりだが、解雇されたくなければ”どんな仕事でも”頑張れ!」そして、良く活躍しても、上司が担当している客にその上司よりも好かれるなどして上の者にとって目障りなったならば潰す!でしたよ。わはは。
(ちょっと品が無い譬え話を書いちゃうけどさ。悪い男が、ガールフレンドを、3人か4人を同時進行でお付き合いしていて、自分にとって都合がいいように女達をうまく競わせて利用してたのなら、そのガールフレンド達はその男を将来の夫に選びたいだろうか?黙契が破綻するとはそういうこと。 相手にして欲しいと願った事を相手が与えてくれなかった悲しみを知ると、DECO*27作品[初音ミクWiki]でイヤホンが満杯になってしまうのさ。作詞が神ってる。)
そして現在。若い世代が、会社が命じる残業や出張を拒否して自分を守ろうとするとか、会社に対して何かしら違和感を感じたと言ってすぐ退職してしまうとか、副業や転職のための勉強は熱心にするのに会社の業務に必要な勉強はしないとか言われています。
昭和じじいや昭和おじさんは、あのスローガンとあの黙契を条件付け洗脳で入力されていましたから、「近頃の若い奴らは~!」と考えてしまうものですが、状況が変化したのですから仕方ない。
企業側はコストパフォーマンスとタイムパフォーマンスの良いパートタイム・ジョブの労働者を使いやすく切り捨てやすく使いたいのと全く同じで、若い世代はコストパフォーマンスとタイムパフォーマンスがもっと良い企業へ転職したいでしょう。
気になるのは、あのスローガンとあの黙契で何を得ようとしていたか、です。
日本国憲法が示す国民の三大義務[ウィキペディア]の「勤労の義務」ってありますが、日本国としては国民を働かせたい訳です。商品を輸出して資金を稼いで、石油やアルミニウムなど日本列島に無いものを購入したい。
国民を働かせるに当たって、働く人々の不安を軽減したかったのじゃないかしら?
会社や勤務先に献身してくれ、その引き換えに、多くの福利厚生や終身雇用を与えるから。「自分は今後どんな人生になっていくのか?」を心配して消耗してしまうことなく、転職サイトの新着情報をチェックするのに神経をすり減らすことなく、会社や勤務先に献身してくれ。と、御恩と奉公[ウィキペディア]のコミュニケーションを整えていたのではなかったのか。
働く日本国民の不安を軽減する仕組みを、再構築するには、どうしたらいいんでしょうね?
,.- ‐── ‐- 、
,r'´ `ヽ お前たちは恵まれてるんだ!
,イ jト、 だから1000兆円の国の借金はお前たちに頼んだぞ
/:.:! j i.::::゙, 更に税金10%あげて、俺の面倒を見て、敬え
i:.:.:| _,, ,、--、 !:;;;;| 老人が遊ぶことで景気が回る、福祉は削減するな、むしろ増やせ
|;;;;j ,r''"二ヽ r'⌒ヽ !;;;!
,ヘ;;i! ,,_r ・,ン.:! {〈・_,>、,, jヘi! これからはシニア向けの街づくりだ、
〈 j>j、 "´, イ `ヽ ,':::〉! シニアを店に呼ぶために努力しろ
`ゝ.`, ノ、__,入 j::rソ なんだ、お前元気ないな
`゙i / ,r===ュ, `, '.:〔_ どうして家を買って結婚して子供を産まないんだ?
}! ! i.:::::::::::.:! ;! .!::::j::`` ー----─r- 、
, イ.:ト、 ゙===='′ ,イ!:::::!::.:.:.:. ゙, `ヽ 最近の若者は全くクズで
_ノ /j.:::!:トヽ、 ´ ̄` ,ノ´ ,リ::::.:!:::.:.. i. \ どうしようもないな
,.r'´ /.::!:::::::| `ヽ`"""´ /ノ.:.:.:.:.::!:.:. | !
/ .:|.:.:.:::ト、 リ / !:. ! | 中国人のチャン君とベトナム人のグエン君のほうが
/ l , へ\! /'7ヽ |: j | お前たちよりもハングリー精神があって素直でいい子だぞ
. / l/^ヾ:::ト、! j! l 〉、 | | . |
/ i .::| i| j! | / `ー'′ ! j! !
老害さん@2014年頃に流行した詠み人知らず
いつも御世話になっております。御疲れ様です。
ε=ε=ε=\(;´□`)/ ε=ε=ε=\(;´□`)/ ε=ε=ε=\(;´□`)/
[419の記事]で、「デフレマインド」について、私の意見を述べました。
〇419「経済成長が出遅れ置いてけぼり、デフレマインドからの~」のお話しの続きです。
日本の経済力の成長が止まっている原因の考察については諸説あります。
度々になりますが、復習から入りたいです。
とある経済評論家の先生は、1985年のプラザ合意[ウィキペディア]による突然の円高によって、経済・経営の規律やバランス感覚を失って、以後の迷走が発生したと言います。
円高になったことにより、「ものづくり日本」の自慢のMade in Japan工業製品の輸出が大変な苦境に陥った一方で、欧米の一流品を輸入するのは買い易くなったし、世界各地の土地を安く買えて、支社作って工場建てたらますます儲かるという「♪24時間戦えますか?」のジャパニーズ・ビジネスマンの時代になりました。
(この説の証拠になるものを探していて見つけたのですが、ジャパニーズ・ビジネスマンが出張して活躍した、その東アジア・西太平洋地域の経済発展史を語る用語で、中所得国の罠[ウィキペディア]というのがあるそうです。これは、日本の工業・産業をコピー貼り付けして展開したことで、急激に、各国が中所得と呼ばれる程度まで経済発展した様子を示しているんじゃないですかね?)
別のある先生は、1991年頃のバブル景気[ウィキペディア]の崩壊(または、バブル崩壊[ウィキペディア])によって、経済・経営の規律やバランス感覚を失ったと言います。銀行から借金するときに土地を担保にしていたが、土地価格の暴騰を政府に止められたため、その借金が焦げ付いた訳です。
以下は私の意見です。
プラザ合意の円高問題やバブル崩壊の不良債権問題は、「失われた30年」の経済停滞のうちの始めの10~15年分の原因であって、直近数年間の伸び悩みの原因は、コストダウンを目標として、東アジア・西太平洋地域から安い物を仕入れることが習慣化したことによる「デフレマインド」が癖になってしまっているのではないか?と思います。山本七平風の”空気学”と、中根千枝・小室直樹風の”ジャパニーズ構造主義哲学”で考えました。
〇労働者の賃金を抑制することと、日本の内需市場の枯死について
さて。「デフレマインド」の病と同時に、労働者の賃金を抑制することも行われてきました。コストダウンの為に。
先日の衆議院選挙のあと、労働者の手取りを増やそうという機運が高まっています。
しかし一昔前、特に2000~2015年頃は、確かに、労働者の賃金を増やすべし・待遇を改善すべしと言う主張は、「左翼的な、社会主義的な、共産党っぽい、運動家っぽい~」と、忌避される空気があったと思います。その逆側には、「グローバルな自由競争の時代に突入したので、韓国が国の総力を挙げてサムソンやLGを育てたように、台湾が国の総力を挙げて鴻海やTSMC等を育てたように、我が国も自動車産業を全力でバックアップすべき!それが資本主義だろ!」という、労働者に負担を強いてでも企業を強化して競争しようと主張する空気があったと思います。
労働者の賃金を抑制することは資本主義的であり、労働者の賃金を増やすことは社会主義的であると、世間の経済学ではなんとなくそう思われているらしいのです。しかし、経営学の視点で考えますと、労働者の賃金を増やすことも資本主義的な態度だと思えます。
それは、何故ならば、合衆国は3億の人々がクレジットカード決済で欲しい物を購入している、個人消費が旺盛な国ですよね。中華人民共和国も、13億14億の人々が、愛面子なもんで、世間体を気にしてちょっと見栄を張って豪華な品物を買い集める、個人消費が旺盛な国ですよね。そして、合衆国の市場も、中国の市場も、大変魅力的であるとして、世界中から多くの企業がそこへ進出してビジネスをしています。
労働者に賃金を多く渡して個人消費が旺盛な経済圏を作り、そこで大いにビジネスをすると言うのは、経営学の発想で考えるならば、全く資本主義的で全く正しい作戦に思えます。
日本社会が、自らの労働者・中産階級を可愛がって養うことを忘れてしまった理由も推理してみますが、まあ、あれですよ、日本は1980年代には各家庭の一戸建て住宅も自家用車もクーラーも調理家電もラジカセも洗浄便座も一通り揃っていたので、一種の満腹状態で、日本の個人消費・内需はこれ以上は伸びしろが少ないと思ったのかもしれません。その頃、東アジア・西太平洋地域の発展途上の国々には、まだ今から開拓すべき手つかずの青空が広がっていたから、そっちの方が市場として面白いと考えて、そっちに進出しちゃったのでしょうか。
ここで、世論の空気に問題があったのは、変に経営学的に考えてしまっていたことです。
経営者もビジネスマンも(または政治家も[→364の記事])、稼いで「成長」するという事を目指して仕事を頑張っていますが、企業活動や経済活動の話題における、その「成長」と言う言葉が、ただただ、無意識に、つい、「昨年の損益計算書よりも今年のが良くなっている事」を意味していたのです。
外国で安く製造して日本で高く売れば大きく儲かるとばかり考えていて、日本国内の産業を空洞化させてしまった。日本の工業や産業を100年200年も持続的に「成長」させる為には、空洞化させちゃったら大失敗じゃないですか。世間は経営学を誤って認識していて、これは間違えています。
428の記事で、国際金融のトリレンマ[ウィキペディア]という言葉を紹介しました。自由主義の経済では、産業の空洞化も、起きるべくして起きた変化であることは分かりますとも。しかし。
もしもの話。
トランプ大統領がメキシコからの移住者を拒絶したら、日本国は合衆国の友好国だからとそのメキシコ人求職者達を日本に受け入れるんですかね?安い賃金で働いてくれそうだから。
日本の経済力の成長が止まっている原因を、短めの言葉で言いますならば、「国内外のバランスが悪かった。」で合っていると思います。
・・・。
「バランスを取れ」というのは、非常に難しい言葉です。1つの事をやろう、全力を注ごう、絶対に諦めずにやりぬこうと決心している人に対して、「いや、あなた、もっと他の事もバランスを取りなさい!」とアドバイスするのは、非常に難しいのです。
鋼鉄の頑固さで、会社の仕事のことしか考えない社畜ソルジャーが、日本社会に色んな弊害を作ってきました。
今年、2024年に日本で生まれた子供の数は70万人に届かない見込みだそうです。在日外国人のお子さんを含めても70万人に届かない見込みだそうです。
もう止まるんだ!家族が居るホームに帰るんだ!
このまま進むと、外国人労働者の誰かにすっかり入れ替わった日本企業だけが残って、在来種の日本人は絶滅してしまうぞ?
もっと、バランスを取るんだよ!
〇働く人々を空気的に圧迫してきた条件付けについて
労働者を力一杯に働かせるべく、色々なスローガンが掲げられてきました。従って、我々は自分達がどういう”条件付け”に基づいて思考しているかをメタ認知しなければ、「バランスを取る」ところまで考えられません。条件付けの魔術の誘導に引っかかったままではいけません。
日本人の伝統的な社会マナーは、孔子の『論語』の影響があるとされます。その「衛霊公 第十五」の
『子曰 事君敬 其事而後其食』
子曰く、君に事えては、其の事を敬して其の食を後にす。
→ 先生はおっしゃった、主君に仕えては、仕事を敬って取り組み、給与の心配は後にせよ。
というような道徳教育を受けて育ってきたんだなということ自体を、知っておく必要があるのです。
例えば。「アットホームな雰囲気の会社です」「会社は家族だ」というのは、会社が社員一同にとって、仕事で稼いだ利益を保管したり分配したりするコンソーシアム[ウィキペディア]である、会社とは社員みんな[経営者+従業員+株主+その他]で共有している金庫であることを、言い換えた言葉です。
「会社は家族だから、社員各人が会社の為に献身してお金を稼げば、みんなに良いことがあるよ」というスローガンであるわけです。
会社が、このスローガンを唱えつつも、「人件費削減」や「40歳以上は早期退職勧奨」を実施するのならば、それは約束を破っている事になります。
働く人々に献身や負担や犠牲を期待するならば、その辛抱や努力の先にある報酬や謝礼をしっかり渡さねばおかしい。
他には、そうですね、「グローバル競争の時代だから、変革は痛みを伴う」というスローガンを使って、外国人技能実習生を保護しつつ日本人社員に負担や犠牲を受容させたとして、その負担の弁償はちゃんと果されたのでしょうか。
実体としては酷くねじれて歪んでいるのに、”条件付け”に基づいて思考しているせいで、よくわからないまま問題点を赦してしまっていて、ただ無自覚に頑張っているというようなのを、全部剥がしませんと、ブラック企業社畜ソルジャーが治らないでしょう。
〇黙契が破綻して、残ったスローガンの残響がむしろ邪魔ではないか
話が何度もくどいですが(老害)、平成生まれの若い方がお読みになる場合の為に、おさらいから書きます。用語を少し足しながら。
この20年ぐらいの間、多くの国が中所得と呼べるレベルまで経済発展をしてきて、グローバル競争が激しい時代になったので、日本企業としては、何の商品を販売すればちゃんと利益がある価格で売れるのか?の商売のチャンスの変化が激しい時代でした。遅れて経済発展してきたアジア各国のそれぞれの地元メーカーが実力をつけてきて、(日本で言えば昭和後半か平成一桁時代で特許権や意匠権の期限が切れたような、ちょっと昔の技術レベルのものではあるが、それゆえに、使い切れないほど高性能・多機能ではない、シンプルで分かり易くてベーシックで使い心地が良い)家電製品や日用品を格安で製造して日本に輸出してくるようになりました。このような競争状態は、コモディティ化[一般化、汎用品化/ウィキペディア]と呼ばれる現象です。日本企業としては、後輩に追い付かれてしまい、その時まで数十年間続けてきた商売を続けていても、ちゃんと利益が得られるような価格では売れてくれなくなりました。(日本企業は、後輩と差をつけるべく「高付加価値化」を目指して、超高性能・超多機能な製品を作ってみましたが、それは数量的にはたくさん売れないので、損益分岐を考えると苦しい取り組みに陥ってしまいました。出井伸之社長の時代のソニーのクオリアとか、覚えていらっしゃるかしら?)
労働者を終身雇用[ウィキペディア]することは、明治時代後半から大正時代に、官営工場において有能な職員を固定的に確保する目的で始まったと言われます。そんな百年も前の始まりはさておき近年までの実際としては、公務員のうちの幾つかの職が終身雇用でしたので、民間企業がそれに負けじと雇用条件を競争してきたために日本社会に広く定着したと言われます。
終身雇用が広く定着していましたが、グローバル競争のなかで商売のチャンスの変化が激しい時代になりました。企業が、工場を建てて、ひとつの製品を30年間も40年間も作り続けて居られて、従業員を終身雇用しているのが、どうにも無理っぽくなりました。
チャンスの変化が激しいから、スピーディに、必要なものを利用して、要らないものを切り捨てるしかない。従業員すらも。労働者を雇いたい状況では安い就職希望者を手軽に雇って、もう要らない状況になったら労働者を手軽に追い払いたい、コストパフォーマンスとタイムパフォーマンスを大事にしよう、となったわけです。(参考:労働者派遣法[ウィキペディア]は1985年交付。2012年と2015年に大きな改正がありました。)
かくして、黙契は破綻しました。
昭和じじい世代には、「会社は家族だから、社員各人が会社の為に献身してお金を稼げば、みんなに良いことがあるよ」という黙契があって、ある企業の正社員になって、企業の信用にも援けられて銀行から住宅ローンを借りて、一戸建ての家を建てて~~のようなモデルが存在したのですが、それは失われました。
昭和おじさん世代は、「嫌なら辞めろ!君の代わりは幾らでも居るからな!」でしたよ。何も悪い事をしてないのに。「いずれはリストラで君を解雇するつもりだが、解雇されたくなければ”どんな仕事でも”頑張れ!」そして、良く活躍しても、上司が担当している客にその上司よりも好かれるなどして上の者にとって目障りなったならば潰す!でしたよ。わはは。
(ちょっと品が無い譬え話を書いちゃうけどさ。悪い男が、ガールフレンドを、3人か4人を同時進行でお付き合いしていて、自分にとって都合がいいように女達をうまく競わせて利用してたのなら、そのガールフレンド達はその男を将来の夫に選びたいだろうか?黙契が破綻するとはそういうこと。 相手にして欲しいと願った事を相手が与えてくれなかった悲しみを知ると、DECO*27作品[初音ミクWiki]でイヤホンが満杯になってしまうのさ。作詞が神ってる。)
そして現在。若い世代が、会社が命じる残業や出張を拒否して自分を守ろうとするとか、会社に対して何かしら違和感を感じたと言ってすぐ退職してしまうとか、副業や転職のための勉強は熱心にするのに会社の業務に必要な勉強はしないとか言われています。
昭和じじいや昭和おじさんは、あのスローガンとあの黙契を条件付け洗脳で入力されていましたから、「近頃の若い奴らは~!」と考えてしまうものですが、状況が変化したのですから仕方ない。
企業側はコストパフォーマンスとタイムパフォーマンスの良いパートタイム・ジョブの労働者を使いやすく切り捨てやすく使いたいのと全く同じで、若い世代はコストパフォーマンスとタイムパフォーマンスがもっと良い企業へ転職したいでしょう。
気になるのは、あのスローガンとあの黙契で何を得ようとしていたか、です。
日本国憲法が示す国民の三大義務[ウィキペディア]の「勤労の義務」ってありますが、日本国としては国民を働かせたい訳です。商品を輸出して資金を稼いで、石油やアルミニウムなど日本列島に無いものを購入したい。
国民を働かせるに当たって、働く人々の不安を軽減したかったのじゃないかしら?
会社や勤務先に献身してくれ、その引き換えに、多くの福利厚生や終身雇用を与えるから。「自分は今後どんな人生になっていくのか?」を心配して消耗してしまうことなく、転職サイトの新着情報をチェックするのに神経をすり減らすことなく、会社や勤務先に献身してくれ。と、御恩と奉公[ウィキペディア]のコミュニケーションを整えていたのではなかったのか。
働く日本国民の不安を軽減する仕組みを、再構築するには、どうしたらいいんでしょうね?
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,イ jト、 だから1000兆円の国の借金はお前たちに頼んだぞ
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|;;;;j ,r''"二ヽ r'⌒ヽ !;;;!
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〈 j>j、 "´, イ `ヽ ,':::〉! シニアを店に呼ぶために努力しろ
`ゝ.`, ノ、__,入 j::rソ なんだ、お前元気ないな
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/ l , へ\! /'7ヽ |: j | お前たちよりもハングリー精神があって素直でいい子だぞ
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老害さん@2014年頃に流行した詠み人知らず