122 箴言 その6 カエサル『ガリア戦記』より
- 2015/11/02
- 06:02
古代ローマの名将カエサル[ウィキペディア]は、『人は見たいものしか見ない』と言った。
・・・それはどういう時の発言なのか知らなかったので原文を調べてみました。
____ ┏━┓
/ \ ┏┛
/ ─ ─\ ・ 『賽は投げられた』→後戻りできない決起の時に
/ (●) (●) \ 『来た 見た 勝った』→戦争で連戦連勝した時に
| (__人__) | 『ブルータス お前もか』→裏切られ暗殺される時に
/ ∩ノ ⊃ / 『人は見たいものしか見ない』→ ?
( \ / _ノ | |
.\ “ /__| |
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------------
ラテン語原文:"et quod fere libenter homines id quod volunt credunt."
メジャーな英訳例:"and also because in most cases men willingly believe what they wish."
[Wikibooks]の日本語訳:「というのも、たいてい人間は(自分が)欲することを喜んで信ずるからである。」
この言葉が出てくるのは、カエサルが自ら記した『ガリア戦記』の第3巻18節[ウィキペディア]です。『ガリア戦記』第3巻は、カエサル軍が現在のフランス北部やベルギーに当たる地域の諸部族を撃破して鎮定した話が記されております。紀元前56年の出来事だそう。
カエサルの本隊がウェネティー族と交戦している間、別動隊を指揮する副将[レガトゥス、総督副官]のサビーヌスはウェネリー族と対峙します。
ウェネリー族は戦闘と略奪行為を望む無頼漢まで集めて大軍勢を成し、これに対して、サビーヌスは有利な地形に陣地を構えました。
ウェネリー族はサビーヌスの陣地に何度も挑発を仕掛けますが、サビーヌスは陣地に籠もって出撃しません。サビーヌスは、副将である自分が総司令官カエサルが居ない所で大軍勢を相手に戦うには、有利な地形や好機を得るまで動いてはいけないと考えていたのです。
やがてウェネリー族は、サビーヌスを怖気づいている根性無しだと侮るようになります。
岩波文庫の当該箇所ではこの様になっています。
----岩波文庫『ガリア戦記』カエサル著 近山金次訳 ISBN4-00-334071-X/129ページ3行目から------
一八 おじけづいたという見方が強くなると、サビーヌスは援軍につれて来たものの中から一人の巧者で適当なガリー人を選び出した。莫大な報酬を与える約束で敵の中へ行くことを納得させ、して欲しいことを教えた。この人は脱走者となって敵の中に入るとローマ軍のおじけづいたことをあばき、カエサル自身もウェネティー族のため苦境に落ちていることを告げ、サビーヌスが今夜ひそかに陣地から軍隊をつれ出してカエサルを助けに行く、と言った。敵はこれを聞くと、こんなうまい機会を逸してはならない、陣地へ向かうべきだ、と叫んだ。種々な事情にかき立てられてガリー人はそうしたのである。先日来のサビーヌスの躊躇は脱走者の言葉で確認されたし、細心に準備していなかった自分らの食糧は欠乏して来たし、ウェネティー族との戦争でローマ軍が苦境に落ちているらしいし、およそ人は自分の望みを勝手に信じてしまう。
-----引用おわり---------------
☆Amazon.co.jpアソシエイト☆
岩波文庫/カエサル『ガリア戦記』[https://amzn.to/3O1Dndp]
そして、ウェネリー族は戦意の無い相手に圧勝できるつもりで、サビーヌスの築いた堅固な陣地にワラワラと突撃して、散るわけです。
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_ (m) _
|ミ|
/ `´ \
____ 『人は見たいものしか見ない』
/⌒ ⌒\ →敵に都合の良い噂話を流して罠に嵌めてやった時
//・\ ./・\\
/::::::⌒(__人__)⌒:::::\ そうか、自分の部下の智謀を賞賛する発言だったのか。
| `ー'´ | 「蛮族にはまともな判断力のある軍師は居ないらしいわ」
/ ∩ノ ⊃ / という嘲りも含まれているな。
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, -、‐、=、
/ヾ ヽ_ヽ_ヽ. | ┼
ゝr >''_,, ゚-;;゙;;;-,,,、 レ c!、| ┼
|♀ツ __ ,.、゙'!. レ c!、| ┼
f;;;ll;;>/ ,,≧. i'≡ i レ c!、
l;.、lll. l. !
/l.ヘll ,,. " ,, l
i;;;ヘ._ll ハ ̄ ̄ハ l ,,,
l;;;;;;;;;;lヾ、 ゝ._,/ ,,.-''''" i,,
ヾ;;/ヽ. ヾ、 ,// / ハ
,.イ///ヘ. ((ン" ,.' ,/ / ,l.
,,. < ヾ///\/゙,' . ,' / ,'l!
/ 、 ヾ'/// ,' ,' , ,/ / ,!
/, ', ヾ;i i ! i ,/ / /ハ
/ l__,l__,,!,,,.l、,/ / // ト、
ヽ. i l' i i i i' ,!゙i'Kノン i ; i!
ヽ! ゞl.l.i i. / ! i ツ ! |、
゙i , -ゞ=⌒ヽノノ1 / | | ヽ
、! / ー゙─--゙ニ;lノ/,.-、| l ヽ
V >! ,.ノヽ;;;;;;〈'゙i. l ヽ
,,. ≦三! )-‐'ャ、;;リ.イ ノ ヽ
r'丁´ ̄ ̄ ̄ ̄`7¬‐,-、 /
r'| | | |/ >、 /
! | | | |レ'´/| | 待 て
| | | /\ | |l /⊂う |
| | |__∠∠ヽ_\ | リ / j ヽ あ わ て る な
|´ ̄ O  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`! 〉
l'"´ ̄ ̄ヾ'"´ ̄ ̄`ヾ::幵ー{ / こ れ は ローマ軍 の 罠 だ
⊥,,,,,_、 ___,,,,,ヾ| l::::::| |
lヾ´ f}`7 ヘ´fj ̄フ | l::i'⌒i | そ ん な 事 は 無 理 だ
l ,.ゝ‐イ `‐=ニ、i | l´ ( } ヽ
l { U | l 、_ノ ∠ヘ
l / ̄ ''ヽ、 | l ヽ_ \,_________
! ハ´ ̄ ̄ ̄`ト、 |亅〃/\
,人 f ´ ̄ ̄ ̄``ヾ j ,!// {_っ )、
// `ト、__iiiii______,レ'‐'// _,/ /スァ-、
,.イl{ { 々 !/´しllllト、 ̄`ヽ、 // /´,.-、 /彑ゝ-{スァ-、
,.イ彑l l > ゞ く l 〃 l|ハ.lヽ、 ハVゝヽ二ノ/ゝ-{、彑ゝ-{、彑ァ-、
,.イ彑ゝ-'l l ( (,) レシ′ !l `ソァ'´ _ノ7{、彑ゝ-{、彑ゝ-{、彑{
ュゝ-{、彑l l ` -イヘ !l // /⌒ヽヾ/_ゝ-{、彑ゝ-{、彑ゝ-{、
{、彑ゝ-'l l f⌒Yハ ', !l/ / ヽ_う ノ /-{、彑ゝ-{、彑ゝ-{、彑ゝ
彑ゝ-{、彑l l{ に!小 ヽ /!l / ,/ /彑ゝ-{、彑ゝ-{、彑ゝ-{、
諸葛亮(孔明)&司馬懿(仲達)@横山光輝『三国志』
※陳倉戦=第二次北伐は西暦228年、五丈原戦=第五次北伐は西暦234年です。
・・・それはどういう時の発言なのか知らなかったので原文を調べてみました。
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/ (●) (●) \ 『来た 見た 勝った』→戦争で連戦連勝した時に
| (__人__) | 『ブルータス お前もか』→裏切られ暗殺される時に
/ ∩ノ ⊃ / 『人は見たいものしか見ない』→ ?
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ラテン語原文:"et quod fere libenter homines id quod volunt credunt."
メジャーな英訳例:"and also because in most cases men willingly believe what they wish."
[Wikibooks]の日本語訳:「というのも、たいてい人間は(自分が)欲することを喜んで信ずるからである。」
この言葉が出てくるのは、カエサルが自ら記した『ガリア戦記』の第3巻18節[ウィキペディア]です。『ガリア戦記』第3巻は、カエサル軍が現在のフランス北部やベルギーに当たる地域の諸部族を撃破して鎮定した話が記されております。紀元前56年の出来事だそう。
カエサルの本隊がウェネティー族と交戦している間、別動隊を指揮する副将[レガトゥス、総督副官]のサビーヌスはウェネリー族と対峙します。
ウェネリー族は戦闘と略奪行為を望む無頼漢まで集めて大軍勢を成し、これに対して、サビーヌスは有利な地形に陣地を構えました。
ウェネリー族はサビーヌスの陣地に何度も挑発を仕掛けますが、サビーヌスは陣地に籠もって出撃しません。サビーヌスは、副将である自分が総司令官カエサルが居ない所で大軍勢を相手に戦うには、有利な地形や好機を得るまで動いてはいけないと考えていたのです。
やがてウェネリー族は、サビーヌスを怖気づいている根性無しだと侮るようになります。
岩波文庫の当該箇所ではこの様になっています。
----岩波文庫『ガリア戦記』カエサル著 近山金次訳 ISBN4-00-334071-X/129ページ3行目から------
一八 おじけづいたという見方が強くなると、サビーヌスは援軍につれて来たものの中から一人の巧者で適当なガリー人を選び出した。莫大な報酬を与える約束で敵の中へ行くことを納得させ、して欲しいことを教えた。この人は脱走者となって敵の中に入るとローマ軍のおじけづいたことをあばき、カエサル自身もウェネティー族のため苦境に落ちていることを告げ、サビーヌスが今夜ひそかに陣地から軍隊をつれ出してカエサルを助けに行く、と言った。敵はこれを聞くと、こんなうまい機会を逸してはならない、陣地へ向かうべきだ、と叫んだ。種々な事情にかき立てられてガリー人はそうしたのである。先日来のサビーヌスの躊躇は脱走者の言葉で確認されたし、細心に準備していなかった自分らの食糧は欠乏して来たし、ウェネティー族との戦争でローマ軍が苦境に落ちているらしいし、およそ人は自分の望みを勝手に信じてしまう。
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そして、ウェネリー族は戦意の無い相手に圧勝できるつもりで、サビーヌスの築いた堅固な陣地にワラワラと突撃して、散るわけです。
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| `ー'´ | 「蛮族にはまともな判断力のある軍師は居ないらしいわ」
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諸葛亮(孔明)&司馬懿(仲達)@横山光輝『三国志』
※陳倉戦=第二次北伐は西暦228年、五丈原戦=第五次北伐は西暦234年です。