残すところあと1話だが、パっとしない展開で続く。
不整合な場面が、本筋とは別に、任意に挿入可能な単位として撮影されていることがハッキリした。エディターが意図的に、「お気持ち表明」、「おともだちセラピー」、「なかよしハグ」に相当する場面を挿入していることが分かる。なぜなら、前後の脈絡における必然性がない。にもかかわらず、登場人物が唐突に弱みを自覚し、さらに心の許せる友人にだけそれを伝えて、どうにかして癒やされるという同じ趣向が使われる。
今回はマイクル・バーナムがセラピーの犠牲者だ。事前にンドイエ司令官からの厳しい追及があった。
10-Cが全ての切り札を持っていて、指から砂が流れ落ちるようだ、とサルーくんにだけ、お気持ち表明する英雄神バーナム。すると、サルーくんはタルカ出自の大声を発して、お気持ち発散方法を伝授する。
「これが必要だったのね!」
まるで精神病棟で心理療法を受けている人々のようだ。この場面で、コロナ渦の視聴者に安らぎを与えているつもりなのだろうか? サルーとハグして喜ぶバーナム。
「こういう話ができるのはあなただけ」
いやいや、鉄の女バーナムがめげる場面なんて、初めて見せつけられたのだが。「実は弱さを隠していたマイクル」なんて初耳である。キャラクターとして一貫性がなく矛盾している表現に思える。
ンドイエ司令官がバーナムに詰め寄る理由は、ブックらと内通してDMA破壊工作を準備しているからだとも受け取れるが、ンドイエとバーナムの個人的な対立感情が前提のつもりらしく読める。そのくせ、明快な伏線らしきものは提示されておらず、ンドイエが惑星連邦カンファレンスでDMA破壊に賛成だったことくらいしか前提がない。
ゆえに、ンドイエ司令官の心情がよく汲み取れない。ンドイエ司令官は一体何をしたいがためにバーナムに強く当たるのだろうか? あからさまなサボタージュだと訴えながらも、プラズマを放出してタルカの言いなりにすらなる。バーナムに忖度してドクター・ヒライには噛みついたリラク大統領は、なぜかンドイエ司令官に対しては放置だ。どうしてバーナムを擁護しないのか?
地球とニヴァーに“影響”が及ぶのがあと15時間だという。前回は“DMAからのデブリで被害を受ける”まで、と表現されていた。タルカによると、DMA破壊後の“空洞”が地球到達まで一週間あるという。つまり、ライター達が前提としている、地球へ迫る危機の具体的な形が視聴者には明確に伝わらない。クイジャンと同種の危機であるのかどうかすら、はっきりしない。
10-Cは単に銀河に居る人類らを認識しておらずに、超テクノロジーであるDMAを使ってボロナイト採掘をしていただけのようだ。放棄されたガス惑星の遺跡にあった保育室や、(異星人類学者バーナムが解明した)10-Cが恐怖を二度と体験しないために引き籠もったというハイパーフィールドの建設意図に対する説明はまだ提示されていない。今のところ、10-Cは臆病でも精神病質でもなく、物わかりのいい異星生命体に見える。
タルカ側に付いたブックと誘拐されたジェット・リノの経緯は、またもやタルカに罪を着せることでクリフハンガーにした。タルカが欺瞞行為を働くのはこれで何度目だろうか。視聴者は、同じ事を再び繰り返すだけの展開に納得できるだろうか?
10-Cとの対話には、前話で回収した炭化水素がキーとなるも、科学畑であるかどうか定かでない“優秀な”ブリッジクルー3名によるブレインストーミングであっさりと解決する。それを見守るバーナム神は(いつもと違って、自分が解いたわけでもないのに)誇らしげだ。今回は、珍しく科学的なギミックとして描かれたものの、たとえば、映画「未知との遭遇」のような必然的で魅力的な道具立てには見えなかった。TRPGに登場する何の変哲もない、置き換え可能なパズルのようだった。
ジェット・リノの誘拐が、ディスカバリー船内で発覚しなかった理由が後付けで説明され、トリルのゲームで落ち着きを取り戻したゾーラがようやくブックの船に気が付く。
若干のスタートレック要素が使われたが、やはり筋運びは遅く、鈍くさい展開がくどくどと続いた。残念なことに、銀河の危機はまたもや据え置かれたままで、タルカを明確に悪者として描くことで発展しただけだ。
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