必要性と反比例するデバッグの価値、そしてその危険性を読んで。
この前、ゲームの評価についての話をしましたが(『大人数評価サイトの抱えるジレンマ』)、バグがないっていうのも評価に加えるべきかも、と思う時があります。そうすれば真面目にバグ取りをやっている良心的な(ある意味当たり前の)メーカーが損をしないわけですし。
必要性と反比例するデバッグの価値、そしてその危険性 (ゲームミュージックなブログ・Ver.FC2)
少し気になるのですが、本当に「真面目にバグ取りをやっている良心的なメーカー
」は損をしているのでしょうか?
バグはきちんと評価される
結論から先に書いてしまえば、得をすることはなくても損はしていないはずです。バグはポジティブな方向に評価されることはなくても、ネガティブな方向には確実に評価されるからです。そもそもバグだらけのソフトを「素晴らしい」と評価する人がいるでしょうか?
話題となっているゲームはスーファミの名作アクション『海腹川背』のPSP移植版。初代はスーファミなのにラバーの動きを再現した素晴らしいものとして、根強いファンを集め、PSにも移植されました。それ故に、期待していたファンの失望も大きかったものと思われます。
必要性と反比例するデバッグの価値、そしてその危険性 (ゲームミュージックなブログ・Ver.FC2)
上記でも書かれているとおり、すでにバグがあることがわかっている状態で発売を控えているのですから、このゲームの評価はすでにネガティブな方向に向かっています。ゲームを評価するサイトでも、この辺りが評価に含まれないとはとても考えられません。むしろ酷評されるのではないでしょうか?
ソフトにおける(重大な)バグがないというのは、当たり前のことが当たり前にできるということです。車でいうなら「安全に走ることができる」、家電製品の冷蔵庫なら「24時間連続して冷やすことができる」などでしょう。「安全に走ることができない車」や「冷えたり暖まったりを繰り返す冷蔵庫」に満足する人がいるとは思えません。間違いなくクレームが来て、返品する事態になるでしょう。
バグの評価というのは減点式なのです。ないことによってプラス評価にはなりませんが、あればどんどん減点されていきます。致命的なバグがあるならば、他の部分が優れていてもまともに評価されないでしょう。PCのアプリケーションでも、安定性は非常に重要なポイントの一つです。
この辺りはWebのユーザビリティと同じようなものです。優れていても気にはなりませんが、酷すぎるサイトは読まれる前に訪問者が逃げてしまいます。そして、読まれなければ永遠に評価されません。
バグの放置は自らの首を絞めるだけ
実際問題として、バグをなくすことは不可能でしょう。私もそう思います。
ちなみにプログラマが書いた時点でバグのないソースというとは絶対にない、と言われています(逆に開発工程では、全くバグがないと、チェックに問題があると思われます)。それはプログラムを打ったのが人間である以上、間違いは絶対に生じるので仕方ないことです。しかしそれを消すために、デバッグをするわけです。そしてそれを完璧にこなしたものが、問題のない製品として世に出るわけです。
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それではバグを取り除くためのデバッグの価値は落ちているのでしょうか?
いえ、私はむしろ逆に価値は上昇していると思います。というのも、昔と違って今はネットを介して情報が瞬時に広まります。今回のPSPソフトのバグ問題もそうです。ネット上での評判を聞いてからソフトを買うというのも、別に珍しくなく一般的な行動です。これだけ悪評が広まって、今回のソフトがヒットするでしょうか?私はそうは思えないのです。
ブランド力という言葉があります。これ自体には色々な意味があるでしょうが、私は「信頼性」に近いものがあると思います。ブランド力がある企業というのは、「この会社なら大丈夫」と思える企業ではないでしょうか。ゲームで続編ものが強いといわれるのも、そのゲーム自体にブランド力、つまり信頼性があるからでしょう。続編もののゲームが売れやすいのは、信頼性を担保にしているのが要因の一つではないでしょうか?(つまりハズレを引きにくいということ。)
信頼を得るのは大変ですが、失うのは簡単です。客を失望させればいいのです。ゲームメーカーが客を失望させる手段として、バグ満載のゲームを連発することは実に効果的でしょう。「あのメーカーはやめておけ」などという評判になれば、そのメーカーのソフトは発売前から大きな暗雲が立ちこめるはずです。
酷いバグが放置されたままゲームが発売されれば、短期的にはともかく、中長期的にはそのメーカーにとってマイナスの結果しか生み出さないと思います。単純に客を落胆させるだけでなく、そういうレベルの商品を平気で発売する会社だということをみんなが理解するわけですから。
劣悪な商品を発売することは、「天に唾を吐く」のと同じ行為ではないでしょうか?相当な資本力でもない限り、客を落胆させて会社が順風満帆に運営できるとは思えません。このような理由で、私は「真面目にバグ取りをやっている良心的なメーカー
」が損をしているとは考えられないのです。
この記事へのコメント
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>客を落胆させて会社が順風満帆に運営できるとは思えません。
運営できてるから今回の悲劇が起きたわけで・・・
カルドセプトの実績がありながらは発注されて二度でもこれで潰れてません。
どんなに最悪なもん作っても生き残れる会社って困りもんです。
デビルマンの監督も干されずに次回作の準備してましたし(死んだお陰で駄作の量産は回避されましたが)。
今回のソフトはまだ発売されていないので今後はわかりませんが、それでも何の問題もないならこれはこれで凄いと思います。実際の販売本数は発売されてみないとわかりませんが。
> どんなに最悪なもん作っても生き残れる会社って困りもんです。
極端な話ですが、評価は最悪でも実際に黒字になれば問題ないという考え方もあるのかもしれません。企業は営利のためにやっているので、顧客満足度が最悪でも黒字さえ出ていれば生き残れる……のかもしれません。(ただそんなことが続くのかは疑問なんですけど。)
ただ今回は損をするのは発注が終わってる販売店のようなので、制作側が痛くも痒くもないなら困ったものだと思います。単に酷いソフトが売れないだけなら自業自得だと思うのですけどね。