高音質のAptX LL対応のBluetoothレシーバー使い、お気に入りのイヤホンを無線化する(ホワイトノイズ対応版)

August 「MR230B」

 Amazonでセール品になっているのを見かけたので、aptX LL対応のBluetoothレシーバーを購入した。Augustの「MR230B」というモデルで、このタイプの小型Bluetoothガジェットによく見られるレシーバー(受信機)とトランスミッター(発信器)が切り替え式になっているものではなく、純粋なレシーバーとして機能するタイプだ。機能は絞られているがaptX LLに(当然通常のaptX含め)対応しており、対応機器同士でペアリングすれば、高音質で低遅延のサウンドを楽しむことができる。

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 以前aptX LL対応のBluetoothレシーバーとトランスミッターを購入し、そのレビューを書いたのだが、現在も使用しているレシーバーとトランスミッター両対応の「TT-BA08」は、レシーバー動作時にaptXに対応しないという大きな問題があった。そのため、aptXやできればaptX LLに対応する小型レシーバーが欲しかったのだ。

 小型にこだわった理由は端的に、「イヤホンを接続して使いたかった」から。上の記事で同時にレビューした「HEM-HC-BTRATX」は音質には何の不満もなかったが、物理的に大きめでバッテリーも内蔵していないため、手元で手軽に使うには向いていないという問題があった。そのため、「小型で、安めで、バッテリーを内蔵していて、かつaptXに対応しているレシーバー」を機会があれば入手したいと考えていた。

 もちろん最初から「Bluetooth接続に対応した無線イヤホンを買う」という手もあるのだが、当然ながらイヤホンの音質はBluetooth接続のプロトコルのみで決まるわけではない。実際のイヤホン部分、つまりアナログ部の作りで音は大きく変わるわけで、いくらaptXなどに対応していようと、その部分の音が気に入らないという可能性は十分にある。
 その点、Bluetoothレシーバーを使えば、イヤホン部分は自分の好きに選ぶことができる。個人的にはこのメリットがかなり大きいと感じているので、より小さくて手軽だったとしても、Bluetoothイヤホンよりもレシーバーが良かったのだ。

 結果的にその希望は果たされたのだが、実は「レシーバーを買ってきて、手元のイヤホンを繋いで終わり」とはいかなかったので、「MR230B」の簡単なレビューも含めて、その辺りの顛末をまとめてみたい。

若干安っぽいが、aptX派には機能的に十分の「MR230B」

 まず簡単に、いちおう今回の主役となるBluetoothレシーバーをレビューしよう。

 前述のとおり、「MR230B」はBluetooth 4.2に対応したバッテリー内蔵のBluetoothレシーバーだ。サイズは実測で高さ5cm×幅3.5cm×奥行き(厚み)1.5cmと小型で、胸ポケットなどにも当然簡単に入る。音声出力は一般的なイヤホンなどの接続に使う3.5mmのミニジャック、いわゆるステレオミニプラグのみで、後はスライド式の電源スイッチと充電用のmicro USB端子、そしてペアリングに使うボタンが中心にあるだけの極めてシンプルな構造。電源LEDは青いが、ペアリング作業時は青と赤で交互に点滅する良くあるタイプといえる。

 作りとしては、電源のスライドスイッチを中心として、全体的に安っぽい感じではあるが、実売価格も安いので価格なりという印象だろうか。バッテリー持続時間は公称で10時間だが、充電しながらも使えるので、給電手段さえあれば何時間でも使える。なお、ボリューム調整機能はない。

「MR230B」の入力端子とスイッチ
「MR230B」の入力端子とスイッチ部分。ペアリングは、本体中心部のボタンを押しておこなう

 機能的にはやはり「aptX LL対応」というのが一番の売りであり、aptX対応機器同士ならノイズの少ない低遅延で高音質なサウンドを楽しむことができ、aptX LL対応機器となら更なる低遅延を見込むことができる。自分はaptX LLに対応した前述のトランスミッター「TT-BA08」を持っているため、正にぴったりの商品だったわけだ。
 AACには対応していないため、iPhoneなどのApple系のガジェットと組み合わせて使うには向かないだろう。

 音質に関しては「使用するプロトコル次第」という印象で、aptX LLで接続したときは低遅延かつノイズも目立たなく、オーディオアンプなどに接続すれば非常にクリアな音楽を楽しむことができる。イヤホンを直接接続したときの音質は、後ほど詳しく書きたい。
 反面、接続にSBCが使用されるとやはり影響は大きく、全体的に音が薄っぺらくこもった感じになり、聞き比べると明らかに音質の低下と遅延の増加が感じられる。特に影響が大きいのがイヤホン接続時で、「サー」というホワイトノイズが一気に増大するのが印象的。アンプに接続するならSBCでも「聞いてられない」というほどではないが、「aptX接続を体験すると戻れない」という感じだろうか。イヤホン接続なら、aptX接続一択と言ってもいい。

 ちなみに自分が試した限り、「Bluetooth対応のWindows PC (aptX非対応) → SBCで接続 → MR230B」と、何度もデジタル/アナログ変換を繰り返す「Windows PCのHDMI音声出力 → 液晶ディスプレイのイヤホン出力 → TT-BA08(トランスミッター使用) → aptX LLで接続 → MR230B」を比べた場合、それでもまだ後者の方が音質に優れているように聞こえた。SBC変換時に起きる劣化は、デジタル/アナログ変換時に起きる劣化より、さらに影響が大きいということなのだと思われる。

Bluetoothレシーバーに直接イヤホンを繋ぐと、ボリュームとノイズで問題が

 さて肝心のイヤホン接続時の音質だが、手元のイヤホンをそのまま接続したときには、aptX接続でも思ったほどの音質では鳴ってくれなかった。主な理由は音声再生時のホワイトノイズで、SBC接続時に比べればaptXで接続したときのノイズは大幅に減少するのだが、それでも「皆無」とはいかなかった。やはり音声が流れるときに、ある程度のホワイトノイズが発生してしまい、どうにも気になってしまう。

 調べてみると、基本的に「送信側のボリュームを最大にし、受信側のボリュームを絞るほど、ノイズが目立たなく(聞こえにくく)なる」らしい。だが、残念なことにMR230Bには前述のようにボリューム調整機能は付いていないので、そのままでは送信側で絞るしかない。なにせPCを音源にしてWindowsのボリュームを100%で送信すると、爆音でとても聞いてられないからだ。

まず、送信側(BT-W2)の音量が100(MAX)、受信側(HEM-BTRATX)の音量も100(MAX)の場合に最大ボリュームとなるとする。

この際、受信側(HEM-BTRATX)で機器内で発生する固有のノイズがあり、最大音量100に対して、このノイズの音量が10あるとした場合、このノイズをノイズフロアと呼ぶ。

さて、この状態で、もし、送信側(BT-W2)で音量を50に絞ったらどうなるだろうか。受信側(HEM-BTRATX)では50にまで絞られた音量で信号が届けられるのだけど、この場合でも受信側(HEM-BTRATX)のノイズの音量は10のままだ。

この結果、どうなるか?

相対的にノイズの音量が大きくなったように感じる事になるだろう。

つまりこれがノイズフロアの問題だ。

もし、送信側ではボリュームを絞らず、受信側で「ノイズごと音量を下げる」ようにすれば、どうなるか?

この場合、「信号:100/ノイズ:10」→「信号:50/ノイズ:5」のように、音量が半分になればノイズ自体の音量も半分になるわけで、理想的には受信側のみでボリューム調整をした方が望ましいことが理解できるだろう。

aptX-LL接続可能!? 有線イヤホン&ヘッドホンを激安でBluetooth化する①(HEM-BTRATX使用感レビュー)|オモロダイブ

 文章を引用した上記のページでは、「インピーダンスが大きい(32Ω前後)のイヤホンを使うと良い」と書かれているのだが、自分が使用しているイヤホンを調べたところ16Ωのものだった。イヤホンを変えるのは嫌なので、もう一つの対応策である「ボリューム調整機能付きの延長ケーブルを使う」というのを試してみた。買ったのはJVCケンウッドの「CN-M30V-B」というケーブル。

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 結果、確かにホワイトノイズを消すことができた。MR230Bに直接イヤホンを繋ぐと、Windows側のボリュームは5%ぐらいに絞らないと使い物にならないほどうるさい。だが、CN-M30V-Bのケーブル側の調整機能で最小まで絞ると、Windowsのボリュームは50%まで上げても実用的な音量になる。ここまで上げると、ボリューム5%の状態とは比べものにならないほどノイズは低減される。正直なところ、ここまで効果があるのかと驚いたほど。
 欲を言えば、Windows側のボリュームが100%のまま使用できるほどケーブルで音量調節できたら(音量を小さくできたら)良かったのだが、それはまあしょうがない。ホワイトノイズを消すことが目的で、それが達成できたのだから、良しとするべきだろう。

 ちなみに上の「ホワイトノイズが消えた」というのはaptX接続時の話なのだが、試してみたところSBC接続時でもかなりの効果があった。通常、SBC接続の場合は音声に相当なホワイトノイズが乗ってしまうのだが、それが気にならないレベルまで低下するので、想像以上にインパクトが大きい。
 まあ根本的にはSBCを使用しているので、音質の低下や大きめの遅延はどうしようもないのだが、ノイズが消えるだけでも相当に音質が向上したような印象を受ける。とにかく耳障りな音が消えるので、その辺りで大きな違いが出るのだろう。

 結論としては、Bluetoothレシーバーとインピーダンスが小さいイヤホンを組み合わせて使いたいなら、ボリューム調整機能付きの音声ケーブルは大きな効果がある。Bluetooth接続時のホワイトノイズに悩まされている人は、参考にしてみてほしい。