三菱電機のRDT232WX(BK)を買ったのでレビュー

三菱電機の「RDT232WX」が3万円を切ってかなりお買い得感が高まっていたので、数年間使用していたWSXGA+(1680x1050)の安モニタ(TNパネル)の更新用として、4月上旬ごろに購入。約一ヶ月利用して評価がかなり固まってきたので、レビューのエントリを書いてみた。価格.comの液晶モニタジャンルでは相当長い間1位にとどまっていた商品で、自分もそこで目を付けた一品。

MITSUBISHI フルHD対応 23型IPS方式三菱液晶ディスプレイ(ノングレア) RDT232WX(BK)MITSUBISHI フルHD対応 23型IPS方式三菱液晶ディスプレイ(ノングレア) RDT232WX(BK)

三菱電機 2010-05-28
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なおこの「RDT232WX」ノングレア(非光沢)タイプで、グレア(光沢)タイプのRDT232WX-S(AA)も用意されている。

概要

三菱電機の23インチ型のフルHD(1920x1080)モニタ。ここまでは一般的なスペックだが、以下のような特色がある。

  • IPSパネルを使用しているので視野角が広い
  • 比較的豊富な入力端子(DVI-Dx1 D-Subx1 HDMIx2 D5端子x1)
  • 最大反応速度が3.8msと速い
  • 動画再生時に画質を向上させる超解像技術の搭載

安価なフルHDの液晶モニタが1万円前半から半ばで買える中で、これらの付加価値を付けて約2倍程度の価格を付けている「1ランク上の液晶モニタ」だといえる。また特に入力端子数の豊富さという点から、位置づけ的には「PC以外の機器も接続したい人が選択肢に入れるモニタ」という側面が強いと感じた。

実際自分自身の環境でもPC以外には主にゲーム機(XBOX 360)を接続しているが、その用途でも十分に活用できている。

デザイン全般

見栄え的には一般的なPC用ワイド液晶モニタとの違いはほとんどないものの、光沢のあるフレーム(枠)と動作状態を表すLED、リモコン受光部、光センサー、ヘッドフォン出力がセットになった下部のOSD操作部のデザインから、一見して液晶テレビのような印象を受ける。(公式ページの前面拡大画像。)フレーム自体は細めで、画面サイズの割に全体サイズが小さく感じるのは嬉しい。実際に梱包用の箱もかなり小さく、初見ではちょっと驚くほど。手持ちでの持ち帰りもさほど難しくないはず。(以前買ったIO DATA製の22インチモニタは箱が相当大きく、手で持ち帰るのはほとんど不可能に近かった。)

スイッチ類はすべて操作部に下向きで付けられていて、前面にボタン類は一切ない。そのためボタン位置がわかりにくいうえに操作も若干しづらいが、よく使うボタンはすべて付属のリモコンに存在するので大した問題にはならない。ボタン自体も小さく電源スイッチですら他の操作ボタンと同じ大きさなので、設計思想としては「主な操作は(テレビのように)リモコンで」ということだと思われる。

動作状態はすべて中心部の青色LED1個で表され、通常使用(画面表示)状態が点灯、スタンバイ(消画)状態がゆっくりとした点滅、電源OFFが消灯となっている。点滅が気になる人もいるかもしれないが、OSDからLEDの明るさを調節でき、完全に消灯もできるので問題にはならないだろう。

「安っぽい」と言われるスタンド部について

RDT232WXのデザインで恐らく一番言われているのが「ブロックタイプのスタンド(脚部)が安っぽい」というところ。(説明書では「ブロックネック」と記載。)液晶モニタは高さが調節できるものとできないものがあり、安価なものは「高さ調整は完全にできない」というものもある。上下調節機能を付けるとスタンドの構造が複雑になって原価に跳ね返ってくるわりに、画質や見栄えに影響しないため、恐らく真っ先にコストダウンの対象になってしまうのだと思う。

RDT232WXの場合は(恐らく折衷案として)「ブロック状のスタンドを積み重ねて高さを調節する」という仕組みになっていて、0から最大3個の「ブロック」を合体させて4段階調節でスタンドを作るようになっている。特に最大の3個のブロックを合体させた場合は、ブロックのつなぎ目もばっちり見えてしまうし、トップヘビーになってより振動などに若干弱くなってしまうように感じた。ブロック自体はかなり強力にロックされているため「外れてしまうのでは」という心配はないが、逆に「好きなときに任意の高さに調節する」という使い方もあまり現実的ではなさそうだ。

個人的にはブロック1個で使っているため十分に安定しているし、(1個だと)接続部のつなぎ目も画面裏に隠れてしまうため何も気にならない。ただ複数個重ねた場合に「安っぽさ」を感じることも事実で、「まったく高さ調節ができない」という製品よりは(選択肢がある分だけ)良心的ではあるものの、コストとのトレードオフになったこの「高さ調節部の作り」はマイナスポイントに感じる人は多いかもしれない。

画質と液晶パネル部分

前述のとおりに1920x1080ドット表示対応の23型ワイド液晶。パネルはIPS方式で、バックライトはLEDではなくCCFL(通常の蛍光管)を採用。画面の表面は非光沢(ノングレア)で、前述のとおり「RDT232WX-S」という光沢(グレア)タイプが別に用意されている。

以前使っていたのがグレアタイプの液晶だったのでどちらにするか迷ったものの、「PCモニタとしてテキストを見る時間の方が長い」「コントラストの高い画面を見たいなら、(より用途にあった)テレビを使えばいい」という理由からノングレアタイプを選択。結果は正解だったようで、テキストを読むときの目の負担が減ったように感じて、黒い画面でも映り込みが気にならなくなった。どのような用途がメインかによるが、主にPCモニタとしてテキストなどを読むのに使う予定なら、ノングレアのこのモデルの方が無難ではあると思う。

視野角はIPSパネルだけあって、上下左右に視点を動かしても色の変化は感じない。もちろん良くいわれる「寝っ転がって見たい」という場合でも全然問題はない。「画面に合わせて人間の方が位置を調節する」なんてことをしなくて済むため、特に動画を見るときなどに体勢を気にしなくていいのは嬉しいところ。

一部のレビューなどで書かれている「バックライトの明るさのムラ(画面左右で明るさや色が違う)」という現象は、個体差があるのかテストパターンや単色表示をさせても特に発見することはできなかった。ドット抜けも存在しなかったので、パネルとしては当たりを引いたといえそう。もちろんドットバイドットで表示すれば、ボケやにじみは一切ない。出荷時のディスプレイの色合いは色々いわれることもあるが、手元に来た後に任意の設定に変えればいいだけだったので、特に気になることはなかった。

反応速度や遅延はゲーム機を接続してアクションとシューティングをプレイしてみたが、問題を感じることはなくスムーズにプレイすることができた。厳密にフレーム単位で遅延をチェックしたわけではないが、リアルタイム性が求められるゲームでもほとんどの場合何の問題もなさそう。個人的には気にならなかったが、もし残像などを感じる場合は、初期設定ではオフになっている反応速度を上げる「オーバードライブ機能」使用する。これはOSDの「映像モード」から「オーバードライブ」をオンにすればよい。(2段階調節になっていて「2」の方が速い。)

売りのひとつになっている超解像はハイビジョンソースでは効果はほとんど感じないものの、DVDかそれより低解像度のSDソースならばボケやノイズが低減され、見やすくなるものがあった。ただ効果のほどは映像ソースにかなり左右されたので、利用状況によってはあまり恩恵が得られない場合もありそうだ。注意点として、この超解像機能はあくまで動画を見るときに使うものなので、普通のテキストなどを表示するときは、単なるボケやにじみの原因にしかならないのでOFFにしておいた方がいいだろう。

入出力端子

  • 入力端子
    • DVI-D x1 (HDCP対応)
    • D-Sub x1
    • HDMI x2
    • D5端子 x1
    • ステレオミニジャック x1 (PC音声用)
    • RCAピンジャック x1 (D5端子音声用)
  • 出力端子
    • ヘッドフォン用ミニジャック x1

以上のような構成になっている。「PCモニタ」として見れば入力は十分すぎるほどで、DVI + HDMIでデジタル信号を3系統、D-Sub + D5端子でアナログ信号を2系統入力できる。

ビデオ入力の対応解像度は1080p、720p、1080i、480p、480iとなっていて、古めのハイビジョン非対応機器(PS2やDVDプレイヤー、Wiiなど)を繋ぐ場合は、D5端子経由で480pか480i入力するということになる。アスペクト比は全画面と比率保持を任意に選択できるため、一昔前はよく話題になった「アスペクト比(画面比率)が変になる」という事態は発生しない。ただ説明書にも書かれているように480iの入力には若干問題がある(ちらつきが発生する)ようで、実質的に480p以上の解像度対応と考えた方がいいかもしれない。

また、スペックを見ての通りコンポジット入力(黄白赤3本のビデオケーブル)やS端子入力は存在しないので、最低でもD端子で映像出力ができる機器しか接続できない。したがって地デジチューナなどを繋いでTVのように使うこともできるが、完全にTVの代用になるわけではない点には注意した方がいいだろう。(例えば非常に安価な地デジチューナ[AA]の場合はコンポジット出力しかない場合があるし、ビデオデッキやレトロゲーム機をそのままぐのも無理。)

音声出力とHDMI

入力端子が豊富な反面、出力端子はほぼないに等しく、いちおう「スピーカ内蔵」ということでヘッドフォン出力があるのみ。

問題はこのスピーカがかなり貧弱なことで、画面サイズやハイビジョン映像の美しさから考えると、この音質で満足するのはかなり厳しいのではないかと感じた。(詳しくは後述。)かといってモニタ自体にはデジタル・アナログ共に音声出力は存在しないため、接続した機器に別途音声出力がない限り、HDMIで接続しても(途中でHDMI対応アンプを経由しないなら)このスピーカで我慢するか、唯一の出力であるヘッドフォン出力を引き回すしかないということになる。(この手の機器の具体例としては、旧型のXBOX 360本体などがある。)

PC以外の機器を接続したくて、かつ音質にもある程度こだわりたい人は、このあたりの問題をどう解決するか考えておいた方がいいかもしれない。(もちろん「素直にヘッドフォンを繋いで使う」という手もある。)

OSDと各種レスポンス

OSDメニューはブライトネスやコントラスト、色合いなどの一般的な項目も含め、色温度、映像モード(テキスト・動画)、オーバードライブ、オーバースキャン、エコモード、超解像設定など機能が豊富な分だけ項目も多く、複雑な方に入るだろう。もちろん「細かく設定できる」ともいえるが「現在設定している項目」や「接続している端子」によって変更可能な設定項目も変わってくるため、慣れるまでは説明書を見ながら調整していくことになると思われる。

OSD自体のボタン操作レスポンスは特に問題なく、一部のモニタであるような「ボタンの効きが変に悪い」あるいは「押してから反応するまで時間がかかる」ということはない。ただ画面の入力切り替えとスタンバイ状態からの復帰、電源ONから画面表示されるまでの時間は別で、暗転状態が2~4秒ほど続いてしまう。また、超解像やオーバードライブの設定変更時にも一瞬(1秒未満)暗転したり、ちらついたりする仕様になっている。画面入力の切り替えや設定変更を頻繁におこなう人は、気になる部分かもしれない。

入力信号による画面の自動切り替え機能は用意されてはいるが、D-SubとDVIの間でしか機能しない。つまり「D-Sub側の信号が切れたので、自動的にDVI入力に切り替わる」ということは可能だが、「HDMI側の信号が切れたので、自動的にDVIに切り替わる」あるいは「D5端子側の信号が切れたので、HDMIに切り替わる」ということはできない。個人的にはこの部分がちょっと不満に感じてしまった。

それと入力端子数が多いため本体のボタンで操作すると入力切り替えが少々面倒だが、こちらは付属のリモコンに個別に入力端子ごとのボタンが割り当てられているため、あまり問題には感じなかった。このあたりも基本的にはリモコンを使うような想定をしているのだろう。

音質

ステレオスピーカが搭載されている。角が立たない言い方をすれば、PCモニタについているスピーカとしては一般的なレベル。ぶっちゃけてしまえばおまけ程度で、「とりあえず音が出ればOK」という人以外には物足りなく感じる可能性が高い。

比較対象を出すなら「PC本体のビープ音が出るスピーカ」や「ノートPCのスピーカ」よりはマシというぐらい。とはいえ「ノイズが酷い」とか「(アンプが弱すぎて)ボリュームが全然大きくならない」ということはないので、音質にこだわらないなら実用レベルといえる。(スピーカ自体は下向きに設置されているので、前面から見た場合はどこにあるのかは一見してわからない作りになっている。)

ヘッドフォン端子はOSD操作部のボタンと同じ画面下部に下向きに搭載されていて、アクセスはしやすい。特にノイズがのることもなく、ボリュームを大きめにすれば別途アンプやスピーカに繋いでも問題なかったので、ライン出力の代わりに使うことも可能と感じた。低音や高音、サラウンド設定はいちおうOSDで設定できるが、内蔵スピーカの音質から考えると、主にこの端子経由でヘッドフォンを使うときに調節するものなのかもしれない。

各種省エネ機能について

昨今のエコブームを反映してか、自動電源OFFやパワーマネージメント機能は充実していると言える。目新しいものしては「ECOメーター」というものがあって、現在の省エネ電力値を画面に重ねる形で表示することができる。ただ基本的に物珍しいだけなので、恐らくすぐに邪魔になってあまり使う機会はない思われる。

実用的な機能としては以下のようなものがある。

  • オフタイマー - 30分~120分の間で30分刻みで設定可能。
  • 消画モード - 信号の入力状態に関係なくスタンバイ(消画)状態に移行させる。通常のスタンバイ状態と違って、もう一回リモコンなどで「消画」ボタンを押すまで画面はつかない。(スピーカを使用している場合は、音はそのまま流れる。)
  • 自動電源オフ - 特定の状態のときに、自動的に電源を切る。
  • ECO設定 - 画面の明るさを低減させる。言い方を変えれば「自動ブライトネス調節機能」。3段階で調節できて「3」が一番省エネ(画面が暗いの)だが、暗すぎるので実用範囲は恐らく「2」まで。

使い勝手がよかったのが3番目の「自動電源オフ」機能で、以下のような状態で自動的に電源が切れるようになっている。

  1. 信号入力が切れてから30分後
  2. モニタの周囲が暗闇になってから3分後(本体に光センサーが搭載されていて、周囲の光を認識している。)

この2つの条件は併用して設定することができて、「入力信号が切れて30分後か、周囲が暗闇になった3分後」という状態で電源が自動的にOFFになる。早速1.を使ってみると「PCを休止・シャットダウンしたあと」や「一定時間PCを操作しないとき」などに自動でモニタの電源まで切れるため、省エネはもちろんのこと「電源ボタンをわざわざ押さなくて済む」という点が地味に嬉しかった。どうせ使わないなら、スタンバイより電源OFFの方がいい。

気分をよくして2.も試してみたものの、こっちはモニタの設置場所が悪かったのか「暗闇ではないのに電源がOFFになる」という現象が起こってしまったため、残念ながら使い物にならなかった。光センサー部にライトを当ててみたところ電源は切れなかったので、故障ではなさそうだったが、影か何かの影響でそれなりに明るくても「暗闇」と認識してしまったのかもしれない。

ちなみに現在は1.だけONにして使用している。

総評 - PC以外の機器を繋ぐ予定なら特にオススメ度が高い一品。視野角が広いのも嬉しい

RDT232WXは単なるフルHD対応モニタとして見れば、安価なものが1万円強で購入できる中で決して安価とはいえないが、「IPSパネル」「豊富な入力端子」「超解像や速い反応速度」という付加価値が魅力の製品といえる。PC以外の外部機器、特に遅延が少なく、反応速度が速いという点からゲーム機を繋ぐのにピッタリで、ハイビジョン対応のPS3やXBOX 360ならHDMIケーブル1本で美しい映像がドットバイドットで表示できる。23インチという手頃なサイズも相まって、まさに「パーソナル(個人用)モニタ」としての役割を十分すぎるほど果たしてくれるはず。また、D端子があるのでWiiなどの「HDMI(ハイビジョン)非対応機器」が接続できるのも嬉しい。

さしあたってゲーム機を接続する予定がなくても、視野角の広さ、設定項目の豊富さ、超解像、パネル自体の画質の良さ、長めのメーカー保証(標準で3年間あり、最初の1年は無料出張サービスもしてくれる)という点から「最安価格帯より上のモニタを選びたい」という場合にも選択肢に入れても損がない製品だと感じた。「LEDバックライト」に強いこだわりがなく、「入力端子が豊富なIPSパネル」を魅力に感じる人には特にオススメできるモニタだろう。個人的にも「買って満足」という製品だった。