スパマーが喜ぶアメブロの不思議な「マナー」

2人に1人はAmeba(アメブロ)?!|サイバーエージェントではたらく広報担当のブログを読んで。

当社でお勧めしているブログアクセス数UPのポイントとしては、3つ

  1. 積極的に色々な人のブログの読者になる。
  2. 見たブログにはコメントをつける。
  3. ペタをつける。

基本的にブログのマナーとして、
読者になってもらったら、自分も読者になったり、
コメントをもらったら、「コメント返し」を、
「ペタ」をつけてもらったら「ペタ返し」をしに行くというマナーがあります

2人に1人はAmeba(アメブロ)?!|サイバーエージェントではたらく広報担当のブログ

私はアメブロは前から「非常に独特なグループ」を形成していると感じていましたが、なるほど疑問が解けました。mixiでいう「あしあと返し」がマナーとして公式に推奨されているんですね。そりゃ特殊になるわけです。

でも、そんなこと不用意に公式Blogで勧めていいんですか?それで喜ぶのは誰でもない、スパマーなんですけどね。

アメブロという独自世界

私がアメブロの特殊性をはっきりと認識し始めるきっかけになった、ある一つの記事があります。それまでは「大手Blogサービスの一つ」という認識を持っているだけで、利用してもいないので特に気にもとめていませんでした。実際に私が定期的に読んでいるBlogでも、アメブロを利用しているものは一つもありません(*1)でしたので。
([*1]ちなみに今もない。)

今日は、『あわせて読みたい』巡りをしていたのですよ。で、ブログタイトルの横にある[もっと]ってのを辿っていくと、そのブログの“あわせて読みたい”が出てくるので、そこから自分のブログに辿り着けるまでやってみようと、ふと何気に始めてみたんですよ。

~中略~

もうちょっとやってたら、今度はアメーバー系グループがあって、そこから抜けられません。もうここはガチで出られない。抜け道が存在しなくなる。

『斬(ZAN)』 「あわせて読みたい」で自分のブログに辿り着けゲーム!

(強調部分は著者による。)

実際に私も同じことを試してみましたが、引用エントリと同じように一度アメーバグループに入り込むと絶対抜け出せませんでした。何度試しても同じ。当時はなぜここまで強固にグループ化されているのか不思議でしょうがありませんでしたね。

「ペタ」って何だ?

頭の片隅にはあったものの、その後特に調べる必要性も感じなかったので、アメブロ件は放置していました。ところがその後下記のエントリを読んで、再度それを考える機会を得ました。

他のブログサービスを使っていてうんざりしてしまった人に乗り換えてもらうというのが、手堅く入会者を増やす道かと思います。

~中略~

・人間関係にウンザリ…

→あまり知られていませんが、アメブロのペタ地獄などに比べれば、はてなの人間関係は爽やか。これは強みになります。

株式会社はてな最強化計画 - ココロ社 ♪ほのぼの四次元ブログ♪

(強調部分は著者による。)

これを読んで、「アメブロというサービスには記事ではなく人間同士を結びつける何かがあり、それが例の『あわせて読みたい』でわかった強固なグループ化に繋がっているのだろう」と考えるに至りました。で、それが「ペタ」なのだろうと。検索すると、アメブロのヘルプには「ペタ」について以下のように書かれています。

「ペタ」とは、ルームやブログなどを訪問したことをボタン1つで手軽に相手に知らせることができる機能です。前日についたペタ数によってペタボタンのキャラが変わります。

Amebaヘルプ|ブログを見たら「ぺた」っとあいさつ!

FC2ブログにある「記事に対するブログ拍手」ではなく、mixiのような「自動的な足跡」でもない、「任意で残せる足跡」といったところのようです。しかも前日についたペタ数によってペタボタンのキャラが変わりますと書いてありますから、「ペタを残されてキャラが変わること」が一種のステータスになるような仕組みですね。Web拍手とランキングを足して2で割ったようなものでしょうか。

ただ、誰が残したのか明確にわかる点が、Web拍手やランキングシステムとは明確に違うところでしょう。こりゃ確かに「俺が押すからお前も押せ」という「マナー」ができるのもわかるような気がします。不公平感を誘うというかお礼前提というか、とにかく人間関係のしがらみを前提とした設計という印象です。

あしあと返しのマナー化でスパマー大喜びの巻

あしあとシステムはスパムを呼ぶ

ペタ(足跡)返しがマナーになった場合、一番喜ぶのは誰でしょうか?私が真っ先に思いつくのはスパマーです。だって自動ツールで「ペタ」を無差別に残しまくれば、向こうから勝手に「マナー」として読みに来てくれるのですから。そして私が危惧するまでもなく、実際にそうなってシステムに制限が掛けられています。

いつもアメーバをご利用いただきまして、ありがとうございます。

現在、一部のユーザーのスパムペタによってシステム負荷が非常に高い状況となっております。
この状況の緩和のため、一日につけることができるペタ数を上限500ペタとさせていただきました。

アメーバからのお知らせ|Ameba by CyberAgent [アメブロ]

500でもどうなんでしょうね。1日が24時間で、睡眠時間を7時間とすると「24-7=17」で17時間、500/17=29.4ですから、起きている間にひたすらアメブロだけを読み続けても1時間約30ペタですか。上限としては緩すぎる感じですね。しかも対策の目的は「負荷の緩和」であって、スパム対策じゃないんですね。

弊社にスパムはありません

ところで、イントロダクションで引用したアメブロの公式Blogにはなかなか興味深いことが書かれています。

毎月40万~50万程度新しくブログが開設されているそうです

Ameba(アメブロ)では毎月約20万ずつ新しいブログが開設されているので、

新しく始める人の半分が、

Ameba(アメブロ)を選んで下さっているという計算に・・・
嬉しい限りです

2人に1人はAmeba(アメブロ)?!|サイバーエージェントではたらく広報担当のブログ

そもそも1人で複数のBlogを持つことができるのに、なぜ開設数を見て新しく始める人の半分がと言えるのですかね?今回のデータ元のなっている総務省のブログの実態に関する調査研究だと2008年1月現在のアクティブブログについて調査したところ、ブログ数では12%が スパムブログに該当。と書かれていますし、少し前のniftyの調査では以下のように発表されています。

2007年10月は39.3%、2007年11月が40.1%、2007年12月が39.7%、2008年1月が39.9%、2008年2月が40.5%という結果となり、5カ月間の平均で約40%のブログがスパムブログであったとしている。

ニフティ、スパムブログの自動判別技術を開発。国内ブログの4割がスパム

事業者によってはブログ記事の50~60%程度がスパムという事業者もいます。

~中略~

スパムブログの約75%は、スパムブログ数の多い上位5事業者で占められています。

「ブログの4割はスパム」を発表したニフティに聞くスパムブログの実態

(強調部分は著者による。)

スパムの温床になりやすいマナーを推奨して、実際にスパムに使われておこなったのはスパム対策ではなく負荷対策なのに新しく始める人の半分がAmeba(アメブロ)を選んで下さっているという計算になるんですね。実に前向きで羨ましいです。

FC2ブログもスパムについては実に酷いありさまで、その上足跡システムもありますが、まあ「あしあと返し」がマナー化されてないのでありがたいです。現状で軽くチェックしても足跡の3~4割はspam Blogですし、「あしあと返しがマナー化」されたらさらにスパム足跡が増えるでしょう。そうなったらもう実質的にあしあとシステムは機能不全になります(*2)ね。
([*2]今でもそんなに上手い具合に機能しているとは思えませんが。)

アメブロはブログじゃなくて公開SNS

「俺がお前のBlogを読むから、お前も俺のBlogを読め」というのは一種の「契約」です。この場合重要なのは「記事の内容」ではなく、「読んだかどうかという事実」に他なりません。というか主目的は「読む・読まれる」という人間関係であって、内容なんかどうでもいいんです。まさにmixiなんかと同じSNSですね。

ただmixiと違うのは、建前上Blogですので、見ず知らず・無関係・通りすがりの方々からも「契約」を持ち込まれる可能性がずっと高いことです。だって実際に読者になってもらったら、自分も読者になったりと広報Blogに書いてありますので。これを逆にいえば「自分が読者になれば、相手を読者にできる」ということですよね。まあ記事に興味があろうがなかろうが、マナーなんですからしょうがないでしょう。マナーですから。

しかしこの「マナー」、読者を得るという方向性にはポジティブな影響を与えるかもしれませんが、Blogを続けるという方向性だとネガティブな影響が大きすぎる気がしますね。私みたいに「好きなときにエントリを書き、好きなときに人のBlogを読む」というタイプにはまったく向きそうにありません。足跡が付くたびによそから「アクセスしてくれ」と要求されているようなものですから、面倒でしょうがないですよ。そもそもの問題として、大量のアクセスがあるBlogほど書き手に負担がかかりすぎ(*3)でしょう。
([*3]アメブロの売りは確か芸能人Blogだったと思いますが、アメブロを代表するこれらの方々は「マナーの範囲外」なんでしょうね。)

いや、面倒なマナーがないFC2ブログでよかった(*4)です。本当に。
([*4]とはいえFC2は本気でspam Blogを何とかすべきだと思いますが。多すぎですよ。)

関連・参考記事